とあるサイト上で、映画評論家・町山智浩氏について、信者 vs. アンチ派でバトルしているのを見かけた。
どちらも盲信タイプの人種のようで、申し訳ないが「くだらない」と思ってしまったので、その雑感をメモっておこう。
世の中には、以下の3つを切り分けて考えることができない人々というのもいるらしい。
- (A) 評論の対象となっている作品そのもの
- (B) 評論解説の内容
- (C) 評論家個人のパーソナリティや思想・信条
私が映画評論家に求めているのは(B)のみ。
だから仮に、(B)が素晴らしいと思って、自己責任の元に映画を見た結果、(A)が自分の感性が合わなかったと感じても、私は(C)を攻撃したりはしない。
だがアンチ町山氏の中には、(B)を参考にした結果、(A)が自分の感性と合わなかったら、(C)に関するネガティブな情報をわざわざネットで調べ出して、ボコボコに叩く。
逆に町山氏の信者は、盲目的に(B)を参照し、無条件で(A)を町山氏の意見と合わせ、(C)をも絶賛する。
ということで、信者もアンチ派も、上記の3要素を切り分けられないという意味では同類にしか思えない。
さらに町山氏に関して言えば、一般的な日本人の映画評論家と違って、信者 vs. アンチが対立しやすい火種を抱えている。それは、
- アメリカ政治についての言及が多い(町山氏がアメリカ在住、かつ政治ネタ好き、かつトランプ旋風で政治が世間でネタにされやすい社会環境)
- 日本人と韓国人のハーフ
の2点だ。両方とも、(C)に該当する部分。
ここが特殊なので、アンチ(特にネトウヨ系)がネガティブキャンペーンを張りやすいようだ。
では私自身は?と言うと、町山氏の映画解説(つまりB)を楽しみにしている。
他の映画評論家は、自分の感性で「すっげーオススメ」「あの映画はクソ」と語るが、その映画を見たことがない一般人にはその意見を参考にすべきなのか判断がつかないことが多い。
つまりは、映画の主観的な「感想文」の書き手は多いけど、映画「解説」にはなっていないというか。
その人の感想に、自分の感性がたまたまピッタリ合致していればいいのだが、合致しているかどうか、評論の文章だけでは判断できないので、実際に何本か映画を見ないといけない。
こういう二流評論家が多い中で、町山氏の場合は、評論の文章だけでその映画を自分が見たいか見たくないか(=興味あるジャンル・作風かどうか)、直に判断できる点、優れていると思う。
(ちなみに三流評論家は、基本的な作文能力がなさすぎるので、何を言いたいのかさえ分からない。。。)
ある意味においては、映画評論家の町山氏は、絵画解説で有名な中野京子氏(『怖い絵』などの執筆で有名)と近いかもしれない。
例えば中世の宗教画に自分は今まで興味なかったのに、中野氏がその宗教画を解説すると、別の角度から絵画の鑑賞方法が見えてくるので、とても面白いと感じる。その蘊蓄自体が教養があり、またエンタメ性もあって面白いのだ。
だからといって、必ずしもその宗教画の画風が好きなわけではないので、その絵画を家に飾って鑑賞したいわけではないのだ。
さて、話を映画に戻して。
具体論も必要かとおもうので、町山氏が評論している作品の中で、私が最近見た映画の紹介。
『将軍様、あなたのために映画を撮ります』(原題:The Lovers & The Despot)
ドキュメンタリー映画。韓国の映画監督で、金正日によって北朝鮮に拉致され、監禁・拷問の後に、3年間で17本もの映画を作らされた人の実話。
町山氏の解説は、ラジオたまむすびのコーナーのトーク全文書き起こしをどうぞ。
Source: トーク書き起こし
私は先に町山氏の解説(かなりのネタバレを含む)を読んでから、映画を見た。
でビックリしたのが、解説の方が詳しすぎて、映画そのものがショボく感じてしまったという事実。
まぁ、ドキュメンタリーだからありがちな逆転現象なんだけど。
この解説なんかを読むと、「あぁ、信者 vs. アンチがどっちも沸いて出てきそうだなぁ」って感じ取っていただけるのではないかと。