エコ洗剤として、その万能性を最近評価されているのが、重曹、セスキ炭酸ソーダ、クエン酸だろう。
だが、いまいちその中身について理解されておらず、勝手に万能性が独り歩きしてしまい、昨今は間違った使い方がネット上で散見される。
特にセスキ炭酸ソーダ、クエン酸の2つは要注意だ!
警鐘を鳴らすためにも、2つの成分を徹底調査してみた。
♣セスキ炭酸ソーダ
重曹に炭酸ナトリウムを配合したもの。粉末と、それを水で溶かした液体が販売されている。
♠セスキの難点#1: ダメージがデカすぎる
炭酸ナトリウムは重曹よりもアルカリ度が強いので、セスキ炭酸ソーダの方が重曹よりも、油汚れに強いと言えるが、その分ダメージも大きい。
- 重曹: ph 8.4
- 炭酸ナトリウム: ph 11.2
- セスキ炭酸ソーダ(水溶液): ph 9.8
上記のphの数値を見ても、ピンとこない人もいるかもしれない。
中性がph 7で、数字が大きくなればアルカリに、数字が小さくなれば酸性に傾く。
石鹸やシャンプーなどのヌルヌルはアルカリ性の特徴で、ph 9を超えると
- 手荒れに強い人でもゴム手袋の使用が必要となる
- 直接噴射すると、ゴキブリの体を覆う油分が溶けて死滅する
というレベルだ。
つまり、ph 9未満の重曹と、ph 9超のセスキ炭酸ソーダはダメージ度が全然違うということになる。
ちなみに界面活性剤を使った合成洗剤のphは?というと
- トイレマジックリン&バスマジックリン&フローリングマジックリン: ph 6~8(中性)
- ワイドマジックリン: ph 9~11
- 油汚れマジックリン: ph 11~14
Source: マジックリンの成分は?
ワイドマジックリンは、魚焼きグリルの油ベタベタを落とせる粉末付け置き洗剤だ。セスキ炭酸ソーダは、ワイドマジックリンと同等の能力と考えてよいだろう。
油汚れマジックリンは、コンロや換気扇など、たまにしか掃除しない箇所の徹底掃除に使われる。
普段の掃除なら重曹だけで十分で、セスキ炭酸ソーダを使用するシーンはかなり限定される。
♠セスキの難点#2: 研磨に向いてない
セスキ炭酸ソーダは重曹よりも水に溶けやすいため、粉末のままで研磨するにはあまり向いていない。
重曹の場合、粉末のまま掃除したい場所にバラまき、霧吹きで少し湿らせてから雑巾やブラシで磨くと、ベタベタ汚れが落ちやすいという利点がある。
落ちづらい汚れは、強いアルカリで落とすのではなく、粒子で落とすという重曹の考え方の方が応用度が高い。
♠セスキの難点#3: 仕上げの水拭きに向いてない
また水に溶けやすいというのは、別の問題もある。例えば劣化したフローリングのベタベタ足裏汚れをふき取る際には、重曹はOKだが、セスキ水はNG.
理由は、界面活性剤と同様、劣化したフローリングの奥に染み込んでしまうリスクもあるからだ。
重曹の場合は粒子が粗いので、仮にフローリングの溝にハマっても、水分が乾くと再び白く結晶化し、どこが仕上げの水拭き不足なのか、見た目ですぐに判断できる。
仮にセスキ水でフローリングを掃除し、仕上げの水拭きが不足した場合は、毎日フローリングを素足で歩くと皮膚にダメージが出るだろう。
♣クエン酸
レモンなどの柑橘類に入っている酸っぱい成分だ。クエン酸の代わりにお酢を使って掃除する人もいるが、発想は同じで酸性で汚れを落とすということだ。
♠クエン酸の難点#1: 利用シーンが限定される
重曹が弱アルカリ性(ph8.4)なのに対し、クエン酸は酸性(ph2.87)。
酸性は、お風呂の鏡にこびりついた水ウロコや、便器にこびりついた水輪っかなど、ミネラル分の塊を分解するのに役立つ。
一方、油・皮脂汚れにはアルカリ性が効くので、クエン酸のような酸性洗剤が活躍する場面というのは、極めて限定されるだろう。
♠クエン酸の難点#2: 酸性雨よりもダメージがデカい
酸性雨の影響で、屋外の建造物や車の塗装などにダメージを受けている画像を見たことがあるだろう。うわっ、金属が溶けちゃうんだ!と、酸性雨が問題視された当時、ビビったなぁ。
酸性雨は排ガスなどが大気中に放出され、雨で落ちてくる時に雨水が酸性に傾く。酸性雨のph値だけが原因ではないが、やはりphが酸性に傾くのはダメージが大きいのだ。
酸性雨の定義は、ph 5.6以下!
クエン酸は、ph 2.87!
つまりクエン酸は、酸性雨の2~3倍ものダメージ力!
どんだけクエン酸、ヤバいのさ!って話だ。短時間の掃除にクエン酸を使うのは良いが、そのまま水洗いや拭き取りを怠って放置すると、酸性雨以上のダメージが出てしまうので危険なのだ。
♠クエン酸の難点#3: アルカリ洗剤の中和に向いてない
重曹やクエン酸に詳しい人なら「掃除後の仕上げで中和させる」という話を聞いたことがあるかもしれない。
重曹で拭き残しがあると、弱アルカリが残ってしまって傷めるので、クエン酸の水溶液で水拭きすることで、中性にして無害化しようというのだ。
❗ しかーし、クエン酸が多すぎると、むしろ中和ではなく酸性に傾いてしまい、これまたダメージが・・・。
Source: 石鹸百科
中性とはph7.0なので、重曹のph8.4とクエン酸のph2.87を、おおよそ3:1の割合で混ぜないと、中性にならない。
ところが、掃除後の拭き残しで重曹がどれだけ残っているかなんて、誰も分からないのだ。
だからクエン酸による中和配合を的確に行える人間なんて皆無だと言っていいだろう。
こんなミスをするぐらいなら、重曹掃除後の水拭きを徹底する方がマシなのだ。
ここから言えることは、
重曹で掃除した後は、クエン酸による中和は禁止
クエン酸で掃除した後は、重曹で中和すべし
ということだ。
濃度によってphなんて変わるから単純比較は難しいんじゃないですかね。
それに、酢酸水溶液のphも十分低いですよ。
phが大きい/小さいから危険!というのは短絡的すぎでは。
使い方に注意が必要なのは同意しますが。
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